GloryDazeDays

日々のワクワクを受信・発信したい。ぼんやりとした日常を楽しく前進していきたい。

【漫画】絶望が読者の胸を突く。上野顕太郎『さよならもいわずに』

愛する者が居なくなった後を淡々と綴った漫画家のドキュメンタリー

この漫画を知ったのは、確かネットか漫画喫茶か何かでオススメされていたからです。

作者の別の作品も読んだことが無く、あまり予備知識無く手に取ったのですが、読んだ途端に圧倒され、一気に読んでしまいました。

重すぎる題材に戸惑いもありましたが、読み止めることを許さない作者の熱量が犇々と伝わってきました。

正直、読んでいるときはめちゃめちゃ辛いのです。

辛いのですが、作者がこの辛さや絶望とどう対峙し、その先に幸せな未来があるのか?という興味のようなものが沸いてきて、どんどんのめり込んでいきました。

 

妻の急死、絶望の淵からの再生を描く『さよならもいわずに

この漫画は2010年にコミックビームで連載された、作者自身の体験を描いたドキュメンタリー調の漫画です。

主人公は漫画家の自身であり、妻と娘一人の3人家族で慎ましくも幸せな日々を送っていました。

ある日、鬱病と喘息気味ではあったもののいつもどおり生活していた妻が突然他界します。

急に色を無くす世界。

彼の人生はそれ以前とそれ以後で断絶されます。

彼は心の喪失を埋めるため、必死で妻・キホの欠片を探す日々。

そんな折、街を彷徨いながら呟いた一言

「ああ誰かが、俺を狙撃してくれないものだろうか」

辛すぎる現実に押しつぶされそうになった作者の心の叫びが痛すぎる。

永遠の別れ、そこからの再生を描く事は、作者自身のセラピーのようなものでもあり、彼女をずっと忘れないという意思表示でもあり、漫画家としての使命のようなものでもあったのでしょうか。

内容紹介
「祈りのような清々しささえもたらす」夏目房之介、絶賛。『このマンガがすごい! 2011』第3位、『このマンガを読め!2011』第3位、第14回文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品、マンガ大賞2011第6位…現代を代表する漫画として高い評価を受け大ヒット。幸せな家庭を築いていた漫画家に突如訪れた悲劇、妻の死。最愛の人との最後の日々を、繊細で果敢に描き尽くすドキュメント。

Amazon.co.jp: さよならもいわずに<さよならもいわずに> (ビームコミックス) 電子書籍: 上野 顕太郎: Kindleストア

 

僕は全く作者のことを知らなかったのですが、作者の上野顕太郎さんは主にギャグ漫画を得意とする漫画家さんだそうです。

上野 顕太郎

上野 顕太郎(うえの けんたろう、1963年4月18日 - )は、主にギャグ漫画を執筆する日本の漫画家。東京都目黒区出身。ニックネームはウエケン、うえけん。妻は声優・女優の上野アサで、死別した前妻との間に1女を儲けている。
主な作品に『帽子男は眠れない』(1992年)、『ゲームびと』(1998年)、『ひまあり』(2000年 - 2002年)、『夜は千の眼を持つ』(2006年 - )、『さよならもいわずに』(2010年)などがある。以上のうち『さよならもいわずに』だけはギャグ漫画ではなく「妻の死」を扱ったドキュメンタリータッチの作品であり、2011年のマンガ大賞にノミネートされた。
キャッチフレーズは「ヒマ(暇)」「五万○」など。前者は「ヒマだからな!」「暇を売りにしている」などと使われ、後者は「五万人だ!」「五万階だ!」などと使用される。

上野顕太郎 - Wikipedia

 

この漫画のココがオススメ&イマイチ

1.誰にでも起こりうる絶望を淡々と描く

自分にはまだ経験が無いですが、近しい者の死は必ずあります。それを淡々と描くことでどこまでもリアルな事実が読んでいて伝わってきます。正直読んでいて辛くなる場面が多々ありましたし、遣り切れなさを感じました。時折ギャグを交えてくるのですが、その違和感が逆に悲しみを浮き立たせます。時間軸が変化するので、事の始まりがいつだったかを覚えておくと読みながら過去の話か未来かが分かりやすいです。作者の絶望とそこからの再生を読み取れば、自分の中で思うことは必ずあります。

2.当たり前の幸せを感謝しようと思える

上の感想と似ていますが、読後感が凄すぎます。そして自分に照らし合わせて、今の幸せは当たり前ではないのだと、そう思えます。

3.1巻読みきりの読みやすさ

この手の内容で10巻とかになっても、話しが重過ぎて読めないと思いました。全1巻の読みきりが丁度よく、また内容も死別直後、過去、未来とバランスよくまとまっています。

4.内容が重過ぎて読者を選ぶかも

正直、直近で同じような経験をされた方は読んでいて辛いと思います。その方の気持ち次第でしょうけれど、まだ整理が付かない人には向いていないのかと思いました。また、小学生・中学生くらいだとあまりにも重過ぎてストーリーに感情移入できないのかなと思います。

 

まとめと思ったこと

さよならもいわずに去っていった妻を描いたドキュメンタリー漫画

・作者の絶望と喪失、再生の物語が辛くも清しい

・それでも生きていく全ての人たちへ向けた傑作

 

上野顕太郎先生情報】

Twitter上野顕太郎 (@ueken18) | Twitter

コミックビームコミックビーム OFFICIAL WEB SITE