[http://photo credit: rachelgreenbelt artemisia sp, bird, Sanibel, jdy337 XX200912037168.Ajpg via photopin (license):title]
部屋に座ってぼおっとテレビを見ている彼女がいた。
見慣れた、少し縦長の丸みをおびた後頭部と、艶やかなポニーテールがあった。
そこに、そっと後ろから抱きしめた。
柔軟剤と、シャンプーと、甘くて濃い彼女の匂いがした。
、、、幸せだぁ。
そう無意識に、小さく呟いた。
え、何?
いやだから、幸せだなって思って。
うん、聞こえてたよ。
聞こえてて、聞いたの。
そんな想い合っていた女性とも今は別れて随分経つ。
連絡先も、今どうしているのかも知らない。
そして知ろうともしていない。
もう他人同士だ。
他人として過ごし始めてからの方が、付き合ってた年月よりも長くなった。
俺は何がしたいのだろう。
また次も別れるだろうなと思いながらも、人と繋がろうとしている。
それならば、1人で歩めばいいのに。
本当に、何がしたいのだろう。
寂しいのか。
不安なのか。
愛されたいのか。
必要とされたいのか。
交わりたいだけなのか。
もう世の中を分析したり、いきがって生きることもない。
清々しい気持ちで他人に望むこともない。
世界を変えようとすることもない。
先は孤独か。
誰かにすがるのか。
諸々そこまでの計画性は持ち合わせていない。
何がしたいんだ。
とりあえず、穏やかな笑いと、安心できる健康と、少しだけのドキドキが欲しいよ。
そして、うっとりするような一瞬が。
やっぱり間違ってなかったと思える一瞬が。
あの麻薬のような、快楽が。
そしたら、日々は質素に、あまり求めず、期待せずに、ひっそりと生きていくよ。
大きな期待も、野望も持たず。
でももしかしての、ナイフを隠しながら。
舌もとろけるような最後のデザートはいつも毒でできている。