[http://photo credit: The Naked Ape Marilyn & Mick via photopin (license):title]
最近「みなおか」と略すのが主流っぽいが、僕の世代はきっと「みなさん」だと思うんだけどな。
小学生のころ、児童劇団に入っている同級生がいた。
子役の安達祐実が登場する前後で、劇団や子役俳優ってのが自分たちの周りでも認識された頃だった。
しかし僕はそういう同級生が近くに居たというのもあり、もっと早くからそういう存在を意識できていた。
彼は学校をいつも相当な頻度で休んでいた。
もしくは早退や遅刻してくることも多々あった。
1週間毎日登校できるのは珍しいことだったと思う。
ちょいちょいテレビで見かける彼は、普段も気さくな人柄であり人気者だった。
僕も仲良くさせてもらった。
小学生の頃、休んだり親からの連絡を先生に伝えるための手段として「連絡帳」というものがあった。
僕も含めた一般的な少年たちは風邪で休んだりの連絡とか、1年に数ページ程度であった。
しかし彼の連絡帳は違って、見ていて楽しかった。
「○○という番組のオーディションに行くので、お休みさせていただきます」とか、
「△△スタジオで収録なので14時に帰らせていただきます」とか、
細かい母親の字でいっぱいだったからだ。
しかも1年間で2冊目の連絡帳だったりして、それは彼と母親の忙しさがいかなるものかを物語っていた。
そんな彼は「みなさん」とも縁があったようで、担任の先生の誕生日にとんねるずのサイン色紙を渡していた。
彼とは中学校まで一緒だったはずだが、中学ではクラスが一緒になることもなかったし、その時点までに取り立てて熱い友情を形成していたわけでもなかった。
だから小学校から一緒だった殆どの同級生と同じように、僕は彼とも疎遠になった。
廊下ですれ違っても特に気に留めることも無くなっていた。
僕は中学で科学部に入り、土曜にも部活に勤しんでいた。
昼になって先輩と弁当屋に向かい、唐揚げ弁当が出来上がるのを待っていた時。
彼の母親が弁当屋に入ってきた。
忙しそうに弁当を注文する姿を見て、まだ彼は役者を続けてるんだろうなぁと思った。
高校から先は全く別の道だったし、その後テレビで見かけることはなかった。
彼は俳優になる事を辞めたのだろうか。
他に目指す道を見つけたのだろうか。
笑顔が爽やかな少年で、今も俳優を続けていたってよかったはずだ。
人が死ぬのには2度あるという。
肉体としての終わりと、存在を忘れられた時だそうだ。
今では彼がどこでどうしているのか全く知らない。
でもこうやってある瞬間に、彼に思いを馳せる友人知人が居るはずだ。
あの頃の同級生たちは、「みなさん」の終了を目にしたとき、きっと彼を思い出したはずだ。
僕はそれになんだか羨ましさを感じる。
そして僕自身は、誰かにとってのそういう対象となり得ていたのだろうか、と考えるとちょっと自信がない。
そんな彼に思いを馳せながら、「みなさん」を一人観る夜だった。